俳優 海老原恒和さん インタビュー全文
サスペンス×ミュージカル『藪-YABU-』クリエイティブ・ディレクター 海老原恒和さんのインタビュー全文を掲載しています。(2023年1月)
―自己紹介をお願いします。
海老原恒和です。普段は俳優をやっているのですけれど、音楽を書いたり、歌を歌ったりしています。
―本作品での役割は?
今回はまだ出る(出演する)か出ないかわからないのですけれど、
音楽とか本(脚本)、美術、照明とかをちょっとずつ相談して、口出して、やっている感じです。
―今回の作品『藪-YABU-』について
サスペンス、のミュージカル。そして仰々しいものではなくて、少人数で映画を見るように
自宅でネットフリックスを見るように楽しめる、もっと身近なミュージカルになったらいいなと思います。
―本作品を作ろうと思ったきっかけは?
昔から実は、兄とはやりたいね、と言っていて、アイデアを出し合っては話し合って、
みたいなことをやってきたのだけれど、まだ全然構想を練るくらいにはいかなかったところで、
同じ気持ちで、海外に作品を持っていきたい、とかミュージカルを作りたい、と思う方と
出会うことが出来た。ので、じゃあ今がチャンスかも、と思った感じです。
―この作品で力を入れているところはありますか?
やりたいかどうか、かと。
その作品を。
そうですね―やりたいかどうか。
「まぁ、こうなってもしょうがないから進めるか」(という姿勢)はあまり好きじゃなくて、
”やりたい”から始まったもの、出発点が”やりたい”だから、
終わりまで”やりたいもの”で終わらせたいな、という感じです。
―モチベーションを保つ、ということでしょうか?
モチベーションもあるんですけれど、やりたいと思わないものをやったら
作った本人が傷つくと思っているので、やりたいものを、やる、という感じです。
―「本当にやりたいんだ」という思いが作品に込められている?
そうですね、その作品の内容がやりたいかと言うよりかは、ミュージカルを作る、という
もうちょっと広い段階がやりたいことなので、僕の場合はですけれども。
なので、脚本は書いてもらいたいように書いてもらって、音楽はこう思った、
というように書いてもらって、それを無理やりねじ曲げるのではなくて、という感じです。
どこのあれ(シーン中の脚本や音楽など)がやってて気持ちいいかどうか、です。
だから柱は「やりたいかどうか」、「できるかどうか」
妥協はあまりメインにしないようにしていきたいです。
―作品内容よりも、作品を製作するということにフォーカスする?
作品にももちろん力をいれています。
結果的に作っているのはこの作品(藪-YABU-)なので、
これ(藪-YABU-という作品)はやりたい、ということですね。
(そのうえで)もっと前の段階で気持ちやモチベーションがなくならないようにしたい。
作品が面白くないから、とかではなくて、そもそも「やりたかった」、
『この作品はなぁ(いまいちだな)』となった時に、『じゃあ、どっから道を間違えたんでしょうかね』
っていうことが『これは本当にやりたいんですか?』というところに帰ることのかな、と思います。
―ミュージカル役者を志したきっかけは?
きっかけは、ちっちゃいころからミュージカルとかが好きで、
ボイストレーニングの延長線上で、発表会でミュージカルをやったりとかはありました。
本格的にやりたいなと思ったのは、覚えていて、
中学二年生の時にあるミュージカルを母親と見に行ったとき、
『あ、俺この役やる人になる。』って帰りに言ったことを覚えていて。
その時の、あのミュージカルが大きいですね、原点として。
―その作品とは?
『ペテン師と詐欺師』というミュージカルで、市村正親さんと鹿賀丈史さんがW主演でやっていらして、
そのときに『うわ、ちょーかっこいい!』となって、決意したのを覚えています。
すごい!と思ったのを覚えています。
―その時から役者のレッスンを始められたのですか?
いや、レッスンは行かず、中学のときはバスケットに夢中だったので、、
受験の段階でそのことを思い出し、お世話になっていた先生方に相談したら
『ミュージカルをやりたいなら、歌をやりなさい』とのことで、歌課(声楽科)に行きました。
『演技は大人になってからでも遅くはないよ』ってみなさん(先生)が口を揃えて仰っていたので、
何か武器になるもの、演技はミュージカルだとそんなに武器にならない、ふうな感じに受け取ったので、
じゃあ踊りか歌か、ってなったとき、歌か、ということで歌になった感じです。
―普段のご自身の性格と演技をしているときの違いはありますか?
あります。めっちゃあります。
真逆の役を振られがちなので、、、
実際はそんなにけんかっ早くもないし、硬派でもないし、
格闘技をやっているわけではないんですけれども、
SPの役だったり、警察官だったり、誰かを取り押さえる役だったり、
強めの役が多くなったりするんで、そいういうときはもう大変です。
前日から一生懸命身体を動かしたり、動画見たりとかして、
『やるぞ!やるぞ!』みたいな風(精神状態)にしていかないと、できないです。
―普段はけんかっ早くなく、穏和な性格?
すぐ怒ったりもするんですけれどそれを人に出したりはせず、
もっと平和でやりたいよー、っていう(性格)。
もめ事は起こさないですけど、
もめ事がおきないと映画とかはつまらないじゃないですか、
何か事件がおきるから、絶対。
だいたいそこでやりあう役が多いです。
―実際はやりあうのは好きじゃないという性格なんですね
そうですね、できれば、、、
―座右の銘はありますか?
役をやることでは、その役の境遇に近い人ですとか、そういう境遇の方に対して、
失礼のないようにしたいというのが一番。
演じる役を観てくれている方で、(役の境遇に)近い人がいると思うんです。
例えばご両親がお亡くなりになってしまった方、お父様に会ったことない方、とか。
そういう役は往々にしてあるので、
自分がそういう役をやるってなったときに、観てくれる(役の境遇に)近い方たちに
失礼の無いようにしたいな、っていうのは本当に、一番にあって。
実際そういう感じで僕が傷ついたことがあったので舞台を観たときに
『あ、これは良くないな』というのがあって。
―ご自身が役の境遇に近い当事者だったわけですね?
(当事者で、自分の境遇に)近い役を見て、
『あ、こういう風に感じる方もいるんだな』と思ったときに、
ちょっと僕とは違うな、と思って傷ついたことがあったので、
これは気を付けよう、って思いました。
―当事者たちの、意を汲むということでしょうか?
意を汲むというより、誠心誠意やる、っていうことになるのですけれど。
―(その役や当事者への)向き合い方、ということでしょうか?
向き合い方、やっぱり透けて見えるものだと思うので
結局(自分は)強い役が多く、だれかを殺してしまう役とか、殺されたりする(役)が多いので
あまり(当事者に近い)人を傷つけないように、したいと思ってやっています。
―今後のビジョンは?
やっぱり全部やりたいので、「やりたい」と思ったことは。
全部と言っても、主に音楽とお芝居なんですが
あとは自分の中で日本と海外、というものにそんなに抵抗がないのと、
(英語(外国語)が喋れるわけではないんですけど)
そもそも海外のミュージカルにあこがれて始めた仕事なので
ゆくゆくは外側(海外)に行ったりとか、日本で作ったものを向こうに持って行ったり、
逆に向こうでやったものをこっちでやったりとかでもいいと思うのですが、
広い世界でやりたいですね、全部。
ー最後に『YABU(仮)』についてご視聴者の方へメッセージをお願いします。
本当にみんな「やりたい」と言って集まって、できたような熱量のこもった作品になると思うのと、
ミュージカル好きが楽しんで観られるようなミュージカルにしたいと思っているので
是非、楽しんでいただければと思います。
よろしくお願いいたします。
(2023.1.14)
海老原恒和 プロフィール
7歳で初めて舞台に立ち、高校で声楽科を専攻。その後ミュージカル俳優・シンガーとして数々の舞台、テレビ、ラジオに出演、また自主公演のプロデュースを手掛け、近年はLogicを用いた作詞・作曲活動にも力を入れる。
舞台作品2020年『you‘re goodman. Charlie Brown』、2019年宮本亜門が演出を手掛ける二期会オペラ『金閣寺』海軍将校役に出演するほか、テレビドラマ『相棒』、2020年テレビ東京ドラマ25『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』、2021年映画『東京リベンジャーズ』などに出演。